2025.10. 22 更新
🎼 日本におけるギター受容史 [昭和初期〜戦中期]
◆ 年 表
| 年 | 出来事・背景 | 関連人物 | 補足 |
| 大正15〜昭和2年 | 池上富久一郎が3回ギター独奏会を開催 | 第3回の演奏曲にメルツ、フェルランティ、カルカッシ、ジュリアーニ、カルリなど | |
| 昭和初期(年不明) | ジュリアーニ「ヴァイオリンとギターのソナタ」作品25がマンドリンとギターで演奏される | バイオリンを使わない編成に当時の思潮が反映 | |
| 昭和2年(1927) | 京都帝国大学マンドリンオーケストラ第7回発表会でソル「二人の友」演奏 | 貴家・福光両氏による演奏。ギター技術の進展に寄与 | |
| 昭和2年頃 | 河合博氏が「詩曲(プジョール)」「メヌエット形式による練習曲(タルレガ)」を演奏 | プジョール作品の初登場。近代的傾向の兆し | |
| 昭和2年 (1927) | 田中常彦・月村嘉孝が欧州旅行へ。送別演奏会でカルリ作品21・タルレガ「ホータ」演奏 | 横浜・下関で開催。貴家・福光氏と並ぶ画期的演奏 | |
| 昭和2年 (1927) | 「ギターの夕」(川瀬晃・佐津川渉三)や大河原義衛の独奏会が開催 | ピアノ伴奏付き。真剣な研究成果の発表 | |
| 昭和2年 (1927) | 雑誌『マンドリン・ギター研究』でセゴビア・リヨベットらの情報が報じられる | セゴビアへの関心が急速に高まる | |
| 昭和2年 (1927) | 菅原明朗氏が「ギターの低音の調性について」研究発表 | 良心的・学術的な内容 | |
| 昭和2年 (1927) | 沢ロ忠左衛門「アルモニア」、宮田政夫「マンドリン・ギター詳論」「エトワール」創刊 | 内容はマンドリン中心だが、ギター探究も含まれる | |
| 昭和3年3月24日 | 池上富久一郎 第4回独奏会「スベインの夕」開催(横浜・日本メソジスト教会) | 勝又一男との二重奏含む。急進的・現代的な選曲 | |
| 昭和3年7月 | 大河原義衛 独奏会(日本青年館) | ソル・タルレガ作品中心 | |
| 昭和4年以前 | 日本楽器から楽譜多数発売 | アルベニス、バッハ、ポンセ、トルロバなどの作品 | |
| 昭和4年5月 | 大河原義衛 北海道独奏会 | モリトール、ソル、タルレガ、グラナドス、自作「花束」など | |
| 昭和4年10月26日 | セゴビア来日(帝劇) | 日本ギター界に決定的な影響。以後の動向は彼を中心に展開 | |
| 昭和4年 (1929) | セゴビア来日に伴いビクターから録音作品発売 | ソル「主題と変奏」、バッハ「ガボット」など | |
| 昭和4年 (1929) | セゴビア来日と同時に新録音4曲発売 | タルレガ「トレモロ練習曲」、トリーナ「ファンダンギリオ」、トルロバ「ソナチネ」など | |
| 昭和4年10月 | セゴビア帝劇公演(3夜) | ソル、バッハ、タルレガ、アルベニス、トルロバなど多彩なプログラム | |
| 昭和4年(1929) | セゴビア来日。日本ギター界に決定的な影響を与える | 「セゴビア主義」が形成され、模倣が始まる | |
| 昭和5年(1930) | 「小倉 俊の夕べ」が開催される | 小倉 俊がセゴビア作品やトレモロ奏法の曲を演奏 | 慶応大学講堂で独奏会。セゴビア影響の明確な表出 |
| 昭和6年(1931) | 東京ギタークラブ第1回演奏会開催 | 小倉俊門下生による試奏会。ギター単独の動きが始まる | |
| 昭和6年(1931) | 京大フィル「楽友」創刊 | 貴家健而主宰。仙台「アルモニア」、東京「マンドリン・ギター研究」と並立 | |
| 昭和7年(1932) | 名古屋ギター研究会創立、機関紙「ギター研究」創刊 | 中野二郎・見崎三郎丙による設立。セゴビア・リヨベットのレコードも発売 | |
| 昭和7年(1932) | 加賀谷憲一が急進的独奏会開催 | アルゼンチン作曲家紹介、保守的傾向に対する批判。武井守成が応酬 | |
| 昭和7年(1932) | 「アルモニア」によるドイツ風三重奏演奏 | 沢口忠左門・永田譲・石森隆知。ソル作品・モーツァルト編曲など | |
| 昭和8年(1933) | 北沢照子「ギター音楽」、月村嘉孝「イ・ギタリステイ」創刊 | 各地に研究会設立。女性ギタリストの進出が顕著に | |
| 昭和8年4月 | アスシオングラナバス来日。舞踊中心の公演 | ギター演奏は少数だが、楽器保持法に示唆を与える | |
| 昭和9年(1934) | 岡山ギター協会(大橘済)、日本ギター・マンドリン協会(佐々木政夫)発表会開催 | 地方団体の活動が活発化 | |
| 昭和10〜11年 | 函館ギター研究会(秋山富夫)、高知ギター協会(長野努)設立 | 独奏会:二宮邦夫、三好哲也、酒井富士夫、永田哲夫、安井五郎ら | |
| 昭和11年(1936) | 「ギター・マンドリン界」創刊 | 中野二郎 | 地方団体の活動が活発化 |
| 昭和12年(1937) | マヌエル・デル・リオ、ホアキン・ロカ来日 | フラメンコ舞踊とギター演奏。各研究団体も活発に活動 | |
| 昭和13年(1938) | ギターの友の会第1回発表会、小原ギター研究所公演など | 独奏会:沢辺敏夫、長野努、溝淵浩五郎、小原安正、深沢七郎。レコード「スペインギターアルバム」発売 | |
| 昭和16年(1941) | 戦時統制強化。「アルモニア」「マンドリン・ギター研究」合併(実質廃刊) | 音楽活動が制限され、自由な発表が困難に | |
| 昭和16年(1941) | 軍事工場・戦地への動員。ギター活動が停止 | 少数のギタリストが慰問演奏を行う | |
| 昭和16年秋 | 小倉俊・小原安正・高木東六が古関祐而「日本風舞曲」初演 | ギターとピアノによる演奏 | |
| 昭和18年(1943) | 春の演奏活動を最後に、ギター界は完全に断絶 | 戦争により文化活動が停止。ギタリストの多くが楽器を手放す |
[参照]:マンドリン・ギター及其オーケストラ[主幹]:武井守成
マンドリン・ギター片影 [主幹]:武井守成
マンドリンとギター [主幹]武井守成
マンドリンギター研究 [主幹]武井守成
ARMONIA [主幹]澤口忠左衛門
『ギターの習い方』小林欽一著 佳生書房